そこにある物語。

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あんざい果樹園
名前はもちろん知っていて、その隣にあるcafe in CAVEも、あの天然生活なんかで見ていたこともあったけど実は福島市が実家なのに行ったことがなかった。

「とっても美味しい果物と素敵なcafeがあるのよ」と噂を聞いていたんだけど、子どもがもうちょっと大きくなってから行こうと何故だか先送りしていた。


そこに、あたりまえのようにあるもんだと思っていたから。


"あんかじゅ"は、果物農家の二代目のおとうさんと、東京から嫁いだおかあさん、
三代目の息子さん二人とお嫁さんで営まれていた果樹園だった。
今、息子さん二人は、小さい孫を連れそれぞれ北海道と長野へ避難している。
それぞれの避難先で、また新しい「福島の種」を撒き、そこに根づいて芽吹こうとしていた。

おとうさんとおかあさんが作るあんかじゅの桃は、
工業製品ではないからもちろんその年の気候に左右されたりもする。
でも、味がいまひとつの年であっても、おとうさんは「今年はいまひとつ」と正直にお客さんに答える。

「果物の代金を頂く代わりに、みんなの果物を代表してまかせていただいて、
自然のご機嫌をうかがいながら育てている・・・素直で正直な農園でありたい」

それが、あんざい果樹園のみんなの願いだから。


だからおとうさんは、桃の木が放射能汚染されてしまった事実を正直にお客さんに伝えた。
去年は段ボールに、大きく「26ベクレルの桃です」と書いて、直売所に置いた。
あんざい果樹園の名前とおとうさんの顔が新聞にも載った。


今年の桃の木は、木の皮を剥いで高圧洗浄機にかけ、
一本一本除染した。
県のモニタリングだけでなく、自分たちの手で外部に計測に出し、
検出限界値・1Bq/kgにして測ってもらった。
結果はセシウム134・1.2Bq+137 1.5Bq=2.7Bq/kg。


木になる果樹は、セシウムを比較的吸収しやすいと言われているそうだ。
特に桃やさくらんぼ、ブルーベリー等。
除染の結果、これだけ下がった。梨やりんごは、さらに吸収しにくいから、
きっと0Bq/kgだね、とおとうさんが笑った。



こうした農家さんたちの真摯な努力が、この福島にはたくさんある。
今年のあんかじゅの直売所にも、放射能測定値の結果がきちんと表示してあった。
おとうさんは、お客さんに嘘をつかない。あんかじゅは、そういう果樹園だからだ。


私も母親だから、出来る限り0Bq/kgのものを子どもに与えたいと思っている。
一時期よりはかなり線量が低くなったのだけど、
福島に帰ってくると未だにどこか緊張してしまう。
娘たちが土を触るとドキッとする。

だけど、正直でおいしい桃は、心からありがたくいただきたいと思う。
あんかじゅのおとうさんとおかあさんの作ったものなら、そう思う。


私は、おかあさんにそっと聞いてみた。

「今年は、避難先にいるお孫さんに、桃を送ってあげるんですか?」

おかあさんは答えてくれた。

「去年はやっぱり考えて送らなかったけど、今年は送ってあげようと思っているの。」

おかあさんが嬉しそうに笑った。
あぁよかった。私は本当にほっとした。


自分たちの作った桃を、孫に食べさせてあげられなかった悲しみ。
自分の親が作った桃を、息子に食べさせてあげられなかった悲しみ。
自然と向き合い、自分たちの仕事を大切に生きてきた家族が、バラバラになってしまった。
夫婦二人になった今、おかあさんはごはんを作るのに張り合いがないと言った。


そこに、あたりまえのようにあった福島での生活は、
原発事故のせいでいとも簡単に奪われてしまった。


でも。


原発事故のおかげで、出会えたたくさんの"ひと"がいる。

息子たちが避難してずっと灯りの消えた隣の家には、
久しぶりに灯りが灯り、たくさんの人が集った。
誰かのためにごはんを作り、みんな一緒にワイワイ話しながら食卓を囲んだ。
おいしいね、って言ってもらえるのが、作る人の喜び。


福島産のたべものは、福島さんの食べ物なのです。
人が誰かのために作るものだから、美味しいのです。

食べる食べないは、ひとによるかもしれないけれど、
私は見つめていきたい。
あんざい果樹園の、おとうさんおかあさんみたいなひとたちを。
知ってほしいとおもうのです。ここにある、福島の今を。
そして、子どもたちに継いでゆきたい、未来の福島を。


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あんかじゅおかあさんとまりっぺ、次女・三女とともに。
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by mikttymama | 2012-08-17 12:44 | 考えること。

杜の都仙台+福島の小さなお料理教室CookingStudio I-e(イーエ)のうちごはん。


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